「事務の仕事は将来なくなる」「AIに仕事を奪われる」このような話を聞くことも多くなりました。現在事務職として働いている方や、これから事務職に転職したいと考えている方にとっては不安ですよね。たしかに、いわゆるルーチンワークや単純作業と呼ばれるものはAIの得意分野であり人より優れている点も多いです。しかし、近い将来「事務職がゼロになる」ということは現段階ではないと考えられます。
とはいえ、「AIが仕事をする」ということはすでに現実で起こっています。AIが人間の仕事を奪う———SF映画のような話ですが、部分的に見れば避けられないことかもしれません。事務職として働いている方も事務職への転職を検討していた方もこれからどのようにしてキャリアを歩んでいくべきか、この記事では事務職の展望とスキルアップについて考えます。
事務の仕事はAIに奪われる?
結論をいうと、すぐに事務の仕事が全てAIにとって代わるということはないでしょう。AIは便利ですが「完全」ではないので人間の手が必要な場面がありますし、AIを導入するにはコストがかかるため「すぐに」という点では現実的ではありません。
ただ、すでに仕事の一部をAIが担っているのは事実です。AIの導入によって業務効率化を実現している企業もたくさんあるので、AIに置き換えられる業務は徐々にAIが導入されその分求人が減ってしまうということは推測できます。
事務職の現状とAIとの関係性
事務職といってもその活躍シーンはさまざまで、一般事務や営業事務など企業の庶務的な業務からアシスタント業務など幅広い業務を担っています。他の職種に比べて高収入は期待できませんが「デスクワーク中心」「土日祝休み」「残業は少なめ」という面からもプライベートとの両立がしやすく、とくに女性からはいつの時期も圧倒的な人気の職種です。しかし、転職市場においては「倍率が高く転職がむずかしい」「スキルが足りず事務から他職種への転職がむずかしい」というのが現状です。
事務職の有効求人倍率
ここで、事務職の有効求人倍率を見てみましょう。2022年8月の事務・アシスタント職の有効求人倍率は「0.32」と他職種に比べて低く、求人倍率の推移を見ても0に近いところで推移していることがよくわかります。一般的に、数値が低いほど転職市場は厳しいので、事務職はいつでも人気があり転職市場がいかに厳しいかということがわかります。
参考:doda「転職求人倍率レポート(2022年8月)」
IT化にともなう事務職への影響
このように、もともと人気が高く転職市場が厳しかった事務職ですが近年のITの進化にともなって転職市場への影響が大きくなっています。
AIの導入が進む理由はただ「優れている」と言うだけではなく「人材不足」も大きな要因のひとつで、AIはその人材不足を救う1つの手段と考えられています。日本においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少が長年の課題であり、外国人労働者や女性の社会進出など多様な人材の活用や働き方改革が求められています。しかし、それだけでは到底間に合いません。とくにこれからの経済を左右するとも言われているIT分野では、2030年には最大で約79万人の人材不足が予測されています。(参考:みずほ情報総研株式会社「IT 人材需給に関する調査」)。
そこで、質の高いIT人材を育成し活用していくためにも可能な範囲でAIを活用していく必要があり、その期限がすぐそこまで迫っているといっても過言ではありません。
AIに負けないためには?生き残るには?
このように、事務職がゼロになることはないもののAIの導入によって社内システムが改良されたり業務効率化が進んだりすることで、事務職の求人が減ってしまうということが予測できます。また、人材不足という側面からAIの導入をせざるをえないということも結果的に「仕事を奪われる」という形になってしまう状況であるといえるでしょう。
そのため、これからも事務職として活躍していくなら、AIにできないような専門性の高い事務スキルを身につけるなど【スキルアップする】ことは避けられません。ですが、事務職としてのキャリアアップ以外にも視野を広げて【キャリアチェンジする】という方法もあるのです。
事務職としてスキルアップ
事務職としてスキルアップしていくなら、AIにできないようなスキルを身に付けていく必要があります。AIはルーチンワークや単純作業を得意とします。教えられたことはスピーディーかつ正確にこなすことができ、その点では人間よりも優れていると言えるかもしれません。しかし、AIにもできないことがあります。
- 「状況を判断し臨機応変に対応すること」
- 「感情に訴えること」
- 「論理的に考え分かりやすく相手に伝えること」
- 「主観や経験をもとに判断すること」
これらは、現時点ではAIには難しいと言われています。これを仕事に当てはめ、自分ができることを考えてみましょう。受け身で仕事をするのではなく「自ら考え行動し、こなしていくこと」「先を読んで行動すること」ができるようになればAIに負けないスキルが身に付くはずです。
また、事務といっても一般事務以外にもさまざまな職種があります。たとえば、専門性の高い金融事務や法律事務などです。事務職としてスキルアップしていくなら、知識や経験の幅を広げて高い専門性を身に付けていくことも大切です。20~30代の若手であれば未経験であっても転職可能なケースもあるので、長期的なキャリアを考えて専門分野でのスキル獲得を目指していくのもひとつです。
別職種へとキャリアチェンジ
また、事務職ではなく別の職種にキャリアチェンジするのもひとつです。事務職は働きやすさやワークライフバランスといった面ではメリットがあります。一方で、もともと人気がある職種なので転職市場では倍率が高すぎるため転職実現性が低いこと、長く働いても年収アップの可能性が他の職種に比べて低いことなどデメリットもあります。
そのため、事務という職種にこだわりすぎずキャリアチェンジも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。事務仕事で身に付けたOAスキルや正確な事務処理能力、スケジュール管理能力などはどんな職種にも必要なスキルなので、それらを活かしたキャリアチェンジも理想のキャリアを築く方法のひとつです。
現在は、働き方改革などもあって事務職以外でもワークライフバランスを実現できる環境が整っている企業が増えてきています。また、キャリアチェンジによって年収アップの可能性も高まるので、仕事へのモチベーションも高まるでしょう。結果的には、事務の経験を活かしつつもキャリアチェンジすることで長期的なキャリア構築を実現することができます。
「自らのスキルを磨く」ことが生き残るカギ
近い将来に事務職がゼロになることはなくとも、確実に事務職の正規雇用枠は少なくなっていて他の職種に比べて転職が難しくなってきているということは事実です。また、AIが人間の仕事を担っていることもすでに現実で起こっていること。AIが人間よりも優れているというわけでないですが、これまでのように事務職を続けることや事務職として転職することはむずかしくなっています。
AIにはできない高いスキルを身に付ける、専門性の高い知識を身に付ける、キャリアチェンジする……生き残っていくためには少し危機感を持ちながらも自分自身をどう磨いていくか考えていくことが大切です。
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