今、日本企業では後継者不足が大きな問題となっており、帝国データバンク(「全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)」)によれば約266,000社のうち約65%にあたる約170,000社で後継者不在という結果がでています。この数値は2011年以降で最低値を更新し、この後継者不足によって廃業に至ってしまう企業は約30%に迫っている状況で、日本経済全体に大きな警鐘を鳴らしています。
そこで今、この後継者不足を解決しようとさまざまな努力がなされていますが、そのうちのひとつが「エグゼクティブ層の採用」です。今回は、このエグゼクティブ層の採用の重要性やエグゼクティブ層の採用を成功させるポイントについて解説します。
エグゼクティブ層とは
エグゼクティブ層とは、経営的視点をもち高い問題解決能力を備えた人材のことです。とはいえ明確な定義があるわけではなく、一般に経営陣や部長以上の役職、専門職などを指しています。よく似た意味としてハイクラス層という言葉がありますが、こちらは主に「約1000万円以上の高年収層」を指しています。
外部環境の影響によってこれまでと同じように働くことがむずかしくなった今、企業の成長性や将来性を不安視し、これまでの経験や知識を活かしつつも新たな場所へ身をうつしてキャリアを築いていこうと考えるエグゼクティブ層が多いです。エグゼクティブ層の市場は小さいですが希少価値のある人材と多方面で注目されており、これからの日本経済を支えていくには必要不可欠な存在です。
エグゼクティブ層の採用が今重要である理由
コロナ禍を機にエグゼクティブ層への採用ニーズはさらなる高まりを見せていますが、後継者不足以外にも、企業のグローバル化・海外進出、事業拡大、M&Aによる企業再編などによってエグゼクティブ層は引く手あまたの状態です。
また、ITの進化にともないあらゆるところでビジネスが生まれるような時代となった今、その変容スピードは非常に早く常に変わり続けています。そんななか「後継者がいない」「グローバル化が追い付かない」という状況では、多くのビジネスチャンスを逃してしまいかねません。
しかし、今の経営層にはない新しい価値観、感覚、経験を備えている人材=エグゼクティブ層を自社に取り込んでいくことで、これまでにない企業価値を生み出す可能性が広がります。いかにして優秀なエグゼクティブ人材を引き入れるかが、企業の将来を担うカギだと考えてもおかしくありません。
女性のエグゼクティブ層にも注目が集まっている
また、女性活躍推進のもと女性のエグゼクティブ層にも注目が集まっています。2019年には改正女性活躍推進法が成立し、より幅広い企業へと女性活躍推進のための行動計画の策定が義務づけられ、企業の女性の管理職登用への意識も徐々に高まりつつあります。
しかし、現在女性の管理職割合は11.9%(厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」)と、政府が掲げる30%という数値は到底及びません。今後、この改正女性活躍推進法がどれだけ女性活躍を後押しし女性のエグゼクティブ層の増加、女性のキャリア構築に力を発揮するのか、社会全体で支援していく必要があるでしょう。
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エグゼクティブ層を取りまくマーケット
コロナ禍においては、多くの業界・企業で事業悪化など大きな影響を受け、それにともない採用活動も一時中断せざるを得ない状況でした。廃業・倒産など消極的な理由から「転職せざるを得ない」という方も多かったわけですが、じつは、このような背景のなか「今こそ転職しよう」と考えた方も多く「今こそ優秀な人材をキャッチしよう」と動いていた企業もありました。
とくに、エグゼクティブ層は経営基盤に携わる人材であり、将来を見据えた長期的な採用となります。そのため、一時的に苦しい状況が続いても長期的な視点で考え、優秀な人材を採用するほうがよいと考えた企業も多かったのでしょう。転職者自身も、変化に強く時代にあわせて柔軟に対応できる将来性のある企業を求めています。
また、コロナ禍を機に「働き方に対する考え方」に変化が生まれたことも転職のきっかけのひとつといえます。以前よりも自分の時間が増えたことで、自身の働き方や今後のキャリアを改めて考えるようになったという人が多く、スキルアップやキャリアアップを目指して積極的に転職を検討する人が増えています。
ひとつのデータですが、エン・ジャパン株式会社の調査によると「新型コロナウイルスの流行によって転職意向に変化はありましたか?」という質問に対し、30代~50代の約40%が「コロナウイルスによって転職意向が高まった」と回答しています。
出典:エン・ジャパン株式会社「ミドル世代の「転職意向」実態調査」
エグゼクティブ層採用の方法
では、実際にエグゼクティブ層の採用を成功させるにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは2つの方法をご紹介します。
1.人材紹介会社を活用
人材紹介会社は、自社が保有するデータベースから企業の採用要件に適した人材を紹介しマッチングするという方法です。自社に登録する幅広い人材のなかから適した人材を紹介することができ、人材紹介会社それぞれの強みや特徴を活かし、独自のつながりを活用しながら人材発掘することができます。
2.エグゼクティブサーチ会社を活用
一方、エグゼクティブサーチ会社は、あらゆる人脈・ネットワークを使って自社に合う優秀な人材を探す、いわばエグゼクティブサーチ専門の企業です。上記で説明した人材紹介会社がエグゼクティブサーチ(ヘッドハンティング)をおこなうケースもありますが、エグゼクティブサーチ会社は「エグゼクティブサーチに特化した会社」ということです。エグゼクティブ層の採用に特化した形で、よりピンポイントにアプローチできる手法として注目されています。ただし、人材紹介会社よりも事業者数が少なく比較的コストが高くなるという特徴があります。
採用したい人材・目的・ゴール設定に合わせて活用する
それぞれ特徴があり、目的や採用したい人物像によってもどちらを利用したらよいのかはかわります。そのため、エグゼクティブ層の採用を成功させるには、採用したい目的やゴール設定、企業のビジョンなども改めて考えたうえで採用活動をスタートさせることが重要です。
とくに、エグゼクティブ層の人材は、企業への貢献度や自身の市場価値、企業の将来性を軸に考えている人も多いので、面談の際には、丁寧な意思疎通とすり合わせが採用成功の大きなポイントとなってくるでしょう。
今後の動向
エグゼクティブ層の採用は、「企業再編」「後継者不足の解消」「事業拡大」など長期的な目的を達成するための採用です。時間をかけて、長期的な視野で考えていかなくてはなりません。小さな市場ではありますがニーズは高く、コロナ禍でも対策していくべきものといってもよいでしょう。企業文化に変革をもたらし、あらゆる外部環境の変化にも動じない人材にアプローチし、柔軟にかつ力強くリードしてくれる人材の発掘に注力してみましょう。
また、今後はだれもが自身のキャリアを自由に築いていく時代です。「女性もキャリアを築ける」「女性が企業の経営に携わっていく」ということも変革のパワーとなっていくことでしょう。女性も積極的に採用し、女性ならではの経験や視野をぜひビジネスにも生かし多様性のある企業を作り上げていくことが今の日本企業には必要不可欠です。
弊社は、関西を中心に女性に特化した人材紹介サービスをおこなっております。今後は、これまで以上に「女性の雇用」「女性の採用」が活発になると予測されます。それにともない、女性の管理職・エグゼクティブ層の転職も増えてくるでしょう。女性の採用、エグゼクティブ層の採用をお考えでしたらぜひ株式会社クラスへご相談ください。
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