最近、AI導入の話題をよく耳にするが、人事部においてもAIの導入が図られている。
2015年12月に、野村総合研究所とオックスフォード大学のオズボーン准教授らの共同研究にて、あくまで技術的な代替可能性としながらも、10年から20年後に、今、日本で働いている人の約半数の49%の職業が、機械や人工知能によって代替することが可能だとする分析結果が発表されている。その中には、人事部の仕事も多く含まれており、採用に関する業務はAIに取って代わると予測されている。
会社成長に寄与する人材の採用~人材育成など人事部の仕事は幅広い。そこにAIを導入し、活躍する人材のパターンを学習させ、面接時のしぐさやクセ、発言などを読み込むことで、誰が活躍する人材なのか、適格に判断することが可能となり、よりよい人材の獲得につながるという。面接を受ける側にとってはAIに判断されるというのは現時点では、不快に思われる方が多いであろう。だが現在採用業務にAIを導入している企業はアメリカはもちろん、日本でも出てきている。「人材獲得への最適化」を目指し、人事部の仕事をAIに任せる企業が今後も増えていくといわれる。
しかし、AIによる採用業務は時代と逆行する可能性がある。ひと昔前の1900年代、職業を探すときに主に用いられていたのは「職業適性検査」であり、自己分析を中心とし、自分にマッチする職業は何かを見出すというものであった。ひと昔前は、労働力があふれ、「適材適所」に人を振り当てる必要がある時代だからこそ役に立っていたのである。しかし、時代は流れ、職探しの際、現代ではキャリアカウンセリングが中心となり、「心理」中心となった。その変化の理由は、変化の激しい時代、自己も職業も変化する時代に適材適所の方法は合わない(その時点では適材適所でもその後はどうなるかわからない)、また人の気持ちを軽視する傾向(機械的に人を数値化するには限界がある)にあるからというものである。現在でも、新卒採用などポテンシャル採用の際には、適性検査を導入している企業も多いが、結局は面接での人柄採用に傾く。
では、AIの人事部への導入はどうであろうか。マッチングの効率化という点では「職業適性検査」と似ている部分が大きく、マッチング率は大きく異なるであろうが、趣旨は似ている。人材と企業のマッチングの最大化のためにAIを導入することは確かにあってもいいのであろうが、AIが採用業務を行うことが果たして本当に、人材にとっても企業にとってもWin-Winとなり得るのか、疑問が残る。
第一、AIが採用業務を行ったとしても、どのような意図をもって採用・不採用にするかはAIには聞けない。最終選考は人が行い、それまでの書類選考・1次面接はAIが行うという形をとる企業も多いというが、人材が選考に対し満足感をもち、入社を決めるというステップが必要な以上、AIに頼る部分もありつつも1次面接などはじめの段階からFace to Face、「人」対「人」によりお互いが納得感を持ち、関係性を築きながら選考を行うことが重要であると考えられる。企業にとっては、面接では見抜けない人材のあらゆる部分をAIが判断してくれるという便利さはあるであろう。しかし、人材不足の現代、一人ひとりのキャリアに向き合い、どのような思いでその企業を選んだのか、AIに判断してもらわず、人事部・採用担当が親身に向き合うことが必要な時代ではないかと思われる。
恋人・結婚相手を自分が決めるのと同じように、企業も自らが会い、話しをすることで合否を決めていくことがやはり良い方法ではないだろうか。AIの活用方法はいくらでもある。AIを活用すべき仕事、そうではない仕事の判断は今後の経営戦略として重要であろう。
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