人材業界について

平均給与停滞するその理由 今後企業に求められる取り組み

アベノミクスの効果も多少あり、経済が回復しつつある日本。また東京オリンピックに向け、更なる経済成長を目指している現在。しかし、経済成長とは裏腹に、サラリーマンの給与は停滞したままである。下記グラフがその推移である。(国税庁「民間給与実態統計調査」より)

1997年をピークに、その後は低下を続け、近年やや上昇はしているものの、1990年代には及ばない。なぜこのような実態が続いているのか、大きな要因の一つに「成果主義」の導入が考えられる。
バブル崩壊から立て直しが急務となった各民間企業は、「成果報酬制」を導入し始め、現在まで至っている。それまでの「年功序列賃金」では、賃金・役職などの見直しが法律により難しく、懐の寒くなった企業にとって立て直しに際してネックとなった。そのため、「成果報酬制」を導入し、若者を中心に昇格しずらく、給与も上がりずらい(評価基準があいまいで業績があがらなければ昇給しない)体制がつくられたと考えられる。よく、「従業員のモチベーション向上によって、立て直しを図るため成果報酬制を導入した」といわれるが、約20年経過した現時点からみると、グラフからも、給与が上がりずらい体制が整えられたと見て取れよう。
「努力して業績を上げれば、報酬が出る」というのは、個人主義であり、企業間の壁が低く転職社会であるアメリカ、ないし欧州諸国であるからこそ機能してきた。しかし、日本は集団主義で成果も失敗もチームで背負い、昇給・昇格するとそこから減給・降格をする日本では「成果報酬制」を機能させ、随時昇給させていくのは使用側にとっては難しい話である。つまり、「成果主義」を導入したところで、日本の雇用の性質上、給与が柔軟に上がるということは難しいといえる。

平均給与が上がらない現在、独身の増加、晩婚化、ママさんの長時間就労、待機児童など問題は多方面に波及する。各企業、人材不足により、正社員の初任給(新卒も中途も)ないしアルバイトパートの賃上げには動いているが、“最初”だけではなく、“その後”の給与の上昇もできる企業が増えると上記のような問題も減少するだろう。

成熟社会の日本では、お金がすべてはない。ただ、社会問題の一端である平均給与の停滞は対処する必要がある。評価基準を明確にし提示するなど、労使双方が納得感のいく賃金体制が重要となろう。年功序列賃金に戻すのは、転職者が多い現代、ナンセンスであるが、「評価昇給」+「定額昇給」を導入するなど対策は多くある。経済成長が低空飛行ではあるが、続いている現在、各企業の給与底上げの対策が望まれる。

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