昨今、よくDX化やデジタル化という言葉を聞くようになりました。DXが進められている今、注目されているのが「リスキリング」です。海外では2010年代後半から一足先に導入されていましたが、日本企業においてもリスキリングの重要性が唱えられています。この記事では、リスキリングの概要や重要性などについて解説します。
リスキリングとは?
経済産業省は、リスキリングについて「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
リスキリングは、業務の担い手が人からAIなどIT技術へと転換していくなかで大規模な失業が発生する技術的失業に対する懸念から、昨年ごろから徐々に注目されるようになった経緯があります。コロナ禍において大量の失業や倒産が相次いだこともあり、生涯役に立つスキルや知識を身に付けたいを考える人が増えたことも影響していると考えられます。
ちなみに岸田政権は、リスキリングによってスキルアップした人材を生かすことで企業は収益を向上させることができ、それによって経済の活性化や賃金上昇を実現できると考え、リスキリング支援として5年間で1兆円を投じると表明するほど重要視しています。
参考記事:DX人材の採用と育成|今後はIT業界以外でも必要となる人材に
リスキリングとリカレントのちがい
よく似た言葉に「リカレント」があります。どちらも「スキルや知識の再習得」「学び直し」といった意味がありますが、その主体が個人なのか企業なのかで違いがあります。リカレントは個人を主体とし、人生を豊かにするための“生涯学習”とも言われていました。社会人が現在の仕事から離れて大学に行って学び直したり、マーケティングやブランディングを深く学ぶために専門スクールに通ったりするなど、一人ひとりが必要なタイミングで教育を受けることを指します。しかし、最近は企業主導で学びを継続させようとする「リスキリング」が広まりつつあります。
とくに近年はデジタル化が著しく、働き方や人材、雇用スタイルなどにも大きな変化が生まれています。また、コロナ禍の制限が徐々に解除されつつあるなかで、長年の悩みだった人材不足の問題も再浮上してきました。このように、環境変化に適応するため企業が主導となっていく「リスキリング」の必要性が高まってきているのです。
リスキリングのメリット
高い精度でリスキリングを実行できれば、企業にとってさまざまなメリットがあります。
- 個人のスキルアップ
- 業務効率化
- 生産性の向上
- 人材不足への対応
- 従業員エンゲージメントの向上
- 企業業績の向上
このように、企業がリスキリングを導入することは、一人ひとりのスキルを高めるだけではなくさまざまなシーンで相乗効果を見込めます。リスキリングをうまく実行できれば個人のキャリアにも良い影響を与えることができ、組織・企業にも還元され、結果として企業業績も向上していくと考えられます。
一部の人材へのリスキリングでは不十分
DXというと、エンジニアなどデジタル人材だけが携わることだと思っている人も多いかもしれません。しかし、企業がDX化を進めていくには、一部の従業員だけが知識や技術を高めるだけでは不十分です。企業でデジタル改革を行えばあらゆる部署であらゆる変化が起きることが想定されるため、全従業員がデジタル化への知識やスキルを習得する必要があります。もちろん、高度なデジタル技術を扱う人材には、それに相応しい教育・研修が必要ですが、リスキリングという考えでは一部の人材ではなくすべての従業員に対して行うことが大切です。
リスキリングにおける4つのステップ
リスキリングを企業がうまく実行していくためには、一人ひとりが継続して学び続けそれを実践していくことが大切です。最終的にはリスキリングで身に付けたスキルや知識を活かして「成果を出す」ことが重要なので、そのために企業は学びの場を設け、継続的にサポートすることが求められます。ここでは、リスキリングの進め方をみていきましょう。
1.スキルを可視化する
まずは、これから新しい技術を導入していく上で必要なスキルは何かを考えますが、まずは現状を把握することが大切です。スキルを可視化することで、すでにあるスキルに対し足りていないスキルを把握することで、これから学ぶべきスキルとのギャップが明確に分かります。学ぶべきことがはっきりとしプログラムを準備しやすくなります。
2.学習プログラムを用意する
スキルが可視化できれば、それに応じた学習プログラムを準備していきます。学習プログラムは必ずしも自社のものである必要はありません。オンラインコンテンツや外部講師なども上手く活用し自社に合ったさまざまな学習プログラムを実践していきましょう。
3.学習に取り組む
スキルの可視化によって整理・準備された研修、プログラムを適切に受けられるように企業はサポートする必要があります。一人ひとりの進捗や到達度まで把握することが必要で、長期的な視点でサポートできる環境を用意できるようにしましょう。最近は、学習管理システム(LMS)を提供している企業も多数あります。個人の進捗を確認できるだけでなく学習教材としても活用でき、その後の研修やフォローにも役立てることができます。
4.実践する
最後は、「スキルの実践」です。習得したスキルを現場で実践していくまでが大切です。ただ、すぐに現場での実践は難しいこともあり、小さなところから成功を積み重ねていく方がイメージしやすかったり恐怖心なく取り組むことができることも多いです。小さなプロジェクトや社内イベント等からはじめていくのもよいでしょう。
まとめ
リスキリングについては、これからさらに精査され政府として来年6月には取りまとめられるとしています。コロナ禍で将来性やキャリアに対する不安を抱く人も多いなか、国や企業の人への投資に対する注目度は高くなり今後の行方が期待されています。リスキリングを効果的に広めていくためにも、国と企業が連携していくことが必要です。
今、世界では急激なデジタル化が進んでいて、デジタル技術が進むにつれてなくなっていく業務・職業があるなか、新しく生まれているものもあります。慢性的な人材不足に悩まされている日本ですが、だからこそリスキリングを実行し新しい価値を創造する方法を見出していく必要があるのではないでしょうか。
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