人材業界について

求人倍率増加×早期離職 中小企業の新卒採用の二重苦に手段はないのか?

2018年卒の就職活動-学生優位の「売り手」が続く就活戦線、その状況のなか就活生の大企業志向に拍車がかかっている。
リクルートワークス研究所の調査によれば、2018年卒の大卒求人倍率は1.78倍、従業員規模別では300人未満で6.45倍、300~999人で1.45倍、1000~4999人で1.02倍、5000人以上で0.39倍と、その差は明確であるという。(第34回 ワークス大卒求人倍率調査(2018年卒))また、その推移をみると、景気回復や人材不足に伴い、その差は大きく開いているようだ。(下記グラフ参照)

■従業員規模別求人倍率の推移出所:ワークス大卒求人倍率調査(2018年卒) リクルートワークス研究所

人材獲得へ中小企業は困難な状況を強いられる・・・

ただ、若い人材の確保へ問題はそれだけではない。「早期離職」の問題も存在する。

特に中小企業は下のグラフが示すように、その数値が明らかに高い。


出所:新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況)より筆者作成

つまり中小企業は、採用競争が激しいうえに、早期離職率が高いという二重苦を強いられている。

採用競争の高まりは、人材不足と経済回復がその背景にあるため、仕方ない仕方のない部分ではある。

しかし、早期離職に関しては、その対策が必要である。

🔶早期離職の対策🔶
このような話題になると「最近の若者は我慢が足りない」「昔はもっと・・・」などの話を耳にするが、早期離職率は約30年間その数値にほとんど変化はなく、「最近」の話ではない。
そこで、早期離職理由のトップ4から早期離職率の中小企業と大企業の違いの理由、そこからみえる早期離職の対策について考えていきたい。

まず、早期離職理由のトップ4を挙げると、
1位「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」(22.2%)
2位「人間関係が良くなかった」(19.6%)
3位「仕事が自分に合わなかった」(18.8%)
4位「賃金の条件が良くなかった」(18.0%)
となる。5位以下とは数値に開きがあり、これらは「早期離職4大理由」とでもいえる。
(参照:厚生労働省 新規学卒者の離職状況(平成25年3月卒業者の状況))

1位や4位の雇用条件の理由については、中小企業は大企業より劣ってしまう部分はあるであろう。

しかし、2位3位の理由に関しては、企業の規模で違う、というだけではないと思われる。

「人間関係」や「仕事内容」については、企業規模別の離職率の違いには、大きく反映されないと推測される。
そして、この比較から行き着くのは「離職後の転職先が、現在より条件が下がる恐れ」があるかが、離職決定の基準であるという中小企業には苦しい実態だ。
しかし、こうした状況の中でも、人間関係を良くすることや仕事のモチベーション向上など打てる手はある。

「条件は多少悪くても、人間関係が良いし、仕事内容も楽しい」となれば、離職の可能性は断然下がる。

また、「雇用条件が良いため仕事を続けている」というより、「仕事の面白さ」「成長」など仕事そのものをモチベーションに仕事をする方が、仕事の持続性は高まり、職務満足感も高くなるということは多くの研究によっても明らかになっている。
労働条件で劣る中小企業にとって、早期離職の防止策は、サポートし合える人間関係の構築、そして仕事へのモチベーション向上をサポートする体制の充実であろう。

離職で「空いた穴」を簡単には埋められない時代だからこそ、そうした温かい職場環境の構築が重要となるようだ。

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